古本市に出店する中で本の陳列は重要だなと感じることが何回もありました。本の並べ方でお客さんに本を手に取ってもらえたり、ブースに近づいてもらえたりします。古本市に出店されていた店主さんと話をしていても、お客さんに全然買ってもらえなかったブースの人が、隣のブースの店主さんが本の並びを変えただけで売れるようになったという話も聞きました。
自分は本屋さんで働いた経験はありませんし、アルバイトをしたこともありませんが、古本市に出店する時に自分なりに本の陳列、本の並べ方で気をつけていること、考えていることをメモしておこうと思います。
本の陳列方法と見せ方
本の陳列の仕方にはいくつかバリエーションがあります。
- 平積み
- 面陳列
- 棚差し(背差し)
「平積み」は表紙を上にする陳列方法です。本屋さんへ行くと、入口正面の台の上に売れ筋の本として同じ本が何十冊と縦に積まれて並んでいます。「面陳列」は表紙を見せる並べ方で、本店のベストセラー10!や本棚に書店員さんのおすすめの本としてよく使われる並べ方です。「棚差し(背差し)」は背表紙を見せて並べる陳列方法で、本棚に本を入れるようにする並べ方です。
自分は古本市に出店する時には、主に平積み、面陳列、棚差し(背差し)の3つの方法を使って本を並べています。
平積み
平積みする本は、お客さんに一番読んでほしい本を選んで並べています。単純に言えば、一番おすすめしたい本です。今まで出店した古本市では、平積みにした本を手にとってもらえる率が高かったです。(実際には平積みではなく、1冊ずつ平置きしていますが・・・)
本が好きな方や探している本がある方よりも、イベントがあるから立ち寄ってみたお客さんや、何気なくブースに立ち寄ってくださったお客さんが手にとってくれます。難しい本や専門的な本ではなく、できる限り優しい本、普通の人でも読みやすい本を平積みにしています。
面陳列
面陳列する本は、自分はこういう者ですと名刺代わりに伝えるための本を選んで並べています。棚差し(背差し)している本の間に1冊だけ表紙が見えるように並べたり、イーゼルやスタンドを使って面陳列させたりしています。
自分は古本市にテーブルを設置することが多いのですが、本を面陳列させることで遠くからでも本の表紙が見えるようになります。その本に興味があればブースにお客さんは近寄ってくださいますし、興味がなければ近寄らずに素通りされます。
単行本を揃えているのか、文庫中心なのか。文芸、ノンフィクション、アート、絵本など、大まかなジャンルを伝えたいと思っています。「自分はこういう本を多く揃えるブースです!」という感じです。表紙が綺麗な本があると面陳列させることもあります。
棚差し(背差し)
棚差し(背差し)する本は、平積み、面陳列しないその他の本です。自分は平積みや面陳列させない本がほとんどのため、数多くの本が棚差しとなります。棚差しには棚差しの良いところがあり、本好きな方は真剣に本を探してくれます。
自分は他人の本棚を見るのが好きです。その方の知識や考えていること、人生観そのものが本棚に表れていると思うからです。本の背表紙を見る中で読みたい本を見つけたときの「これだ!」という嬉しさも感じてほしいなとも思っています。
棚差しの本は、自分自身の考え方、本を探す楽しさを体感してほしいという思いで並べています。
世代で好みの並べ方が異なる?
山下賢二さんと松本伸哉さんの共著である「ホホホ座の反省文」(ミシマ社)に気になる一文が書かれていました。
・・・俺もなるべく品数があった方がいいと思ってる世代やから(笑)、ぎちぎちに置くんやけど、それで引くお客さんいるねん、最近。近寄りがたくなるんかな。・・・お客にプレッシャーかけてしまうんかもしれんな・・・
ホホホ座の反省文(ミシマ社)
たくさん本を並べることができる棚差し(背差し)は、店主さんからみると持参した本を少しでも多く見てもらいたいと思うがこもった行動ですが、多くの人の目にとまるとは限らず、隙間なく本がつまった本棚がお客さんに威圧感のようなプレッシャーを与えてしまうかもしれません。
昔ながらの本屋さんや古本屋さんを出入りしていた世代は、違和感のない陳列方法かもしれませんが、本屋さんが少なくなり、雑貨店やインテリアショップなどが本を並べる今の時代から本を手に取り始めた世代は、少ない冊数の本を平積み(平置き)や面陳列をした方が、近寄りたくなる本の並べ方なのかもしれません。(棚差し=図書館のイメージ?)
ホホホ座の反省文を読みながら、再度考えるきっかけとなりました。
出店する度に悩む本の並べ方
本の並べ方は出店する度に毎回悩みます。おじいちゃんが多いのか、おばあちゃんが多いのか、学生が多いのか、若いお母さんが多いのか、小さな子どもが多いのか・・・。どんなお客さんが古本市に足を運んでくださっているのかにもよって、古本市の間にも、平積みや面陳列させる本を少しずつ変更させたりもします。
本職の書店員さんが見たら「こいつ何言っているんだ?」と思われるかもしれませんが、素人ながらに考えながら、古本市の店主を楽しんでいるつもりです。